Asrock(アスロック)というメーカーをご存じですか?MSIやASUS、GIGABYTEと並び、今やマザーボード4大メーカーのひとつに挙げられています。当然、信頼性や安定性も高いのですが、以前は一風変わったパーツを販売するメーカーとして知られていました。
今回はそんな独自性と信頼性を両立する魅力的なメーカー「Asrock」について解説したいと思います。
「変態マザー」はAsrockの代名詞
実はこのAsrock、かつてはマザーボードメーカー最大手の「ASUS」の子会社でした。しかしどんどん独自性を追求し、現在は独立しています。ASUSといえば信頼性と安定性に定評のあるメーカーで、その子会社として製造のノウハウを積み上げていることから、基礎はしっかりしているのです。
ただし、問題はその仕様です。他のマザーボードメーカーがまず実装しないような「変態仕様」を平然とリリースするのがAsrock。もちろん悪い意味ではありません。むしろ、「こんな組み合わせはAsrockしかやらない!」といった仕様を、かなりの低価格で実現する魅力的なメーカーなのです。
例えば、通常のマザーボードは常識として1つの規格のCPUしか装着できません。CPUソケットは1規格のみに対応しています。しかしなぜかAsrockは、2つの規格に対応できる変態仕様のマザーボードを発売したのです。
実用上、これといったメリットはないものの、実験用マザーボードとして重宝される製品といえるでしょう。普通は一旦CPUを載せたら、違うソケットのCPUに乗せ換えたりしませんからね。
また、PCI Express x16スロットとAGP 8xスロット(PCI Expressより前の古いグラフィックボードの規格)をなぜか1枚のマザーボード上に配置したり、DDR2メモリスロットとDDRメモリスロットを1枚のマザーボードに設置してみたり……。
「誰がいつ使うの?」といった不思議なキワモノ製品をリリースし続けてきたメーカーです。しかし、こういった一風変わった仕様には、明確なコンセプトがあったようです。
Asrockのコンセプト「できるだけ安く新プラットフォームへ!」
これを聞いたとき、私は少し感動しました。なぜかというと、近年のマザーボードは、CPUの世代が新しくなるごとに規格が変わるため、頻繁に買い替えが必要です。
古い自作PCファンであればわかると思うのですが、昔はこれほど頻繁に規格が変わりませんでした。この流れは、2000年代後半から顕著になり、今や常識になってしまったのが本当に残念です。
しかしAsrockは、複数の規格を1枚のマザーボードに乗せることで、新旧規格の橋渡しをしようというコンセプトがあったとのこと。しかもAsrock製品はかなり安く、他メーカーが1万円台前半でリリースした製品と同じ世代のものでも、数千円というレベルは日常茶飯事。
出来るだけ安く、かつスムーズにプラットフォームの乗り換えをしてほしいという信念があったのです。
現在はコストパフォーマンスを追求する優良メーカー
このようなAsrock独自の心遣いも、技術の進歩とともに実現が難しくなり、変態仕様は影を潜めていきました。しかし、現在でも安くて必要十分な機能をもつマザーボードをリリースし続けています。
コストパフォーマンス重視の自作PCファンなら、Asrockのマザーボードにお世話になる機会は多いでしょう。しかし随所に「楽しめる仕様」を残しており、お手頃かつ必要十分で、どこか遊び心をもった優良メーカーとして支持され続けているのです。